最近は、リストラの一環として、事業縮小に伴う配置転換の問題が発生しているようです。新規採用を見合わせ、現員だけで退職者のカバーをするために、長年ある営業所で勤務していた労働者の配置転換が必要となり、転勤命令を出さなければならないようなケースで、 その労働者にとっては両親の扶養、子供の教育、将来の生活計画の変更など家庭生活に大きな影響を与える問題であり、会社の転勤命令に従えない場合もあります。
会社は、強引に転勤を命令できるのか、命令に従わない労働者を解雇できるのか、労働者は、いろいろな問題を抱えながらでも会社の命令に従わなければならないのか、なんとか今までの勤務先を変えないで仕事を継続することはできないのか、などの問題が発生します。
転勤などの配置転換に関する法律的な規制はありません。転勤命令に関する争いの焦点は、その命令の合理的な根拠と労働者の受忍義務の範囲です。労働契約や就業規則の内容、会社の習慣等と権利濫用・公序良俗などによって、正当性を判断することになります。
まず、差別的な配置転換が無効であることは当然です。思想等によるもの、男女の性によるもの、不当労働行為によるものなどは、労働基準法と労働組合法によって禁止されています。差別的な転勤の命令が無効になることは、常識的にも理解されるところですが、このような理由によらない転勤命令の場合でも、会社は差別的なものではない事を明らかにする必要があるでしょう。つまり、対象者の選定方法を明らかにすることが必要でしょう。
転勤命令に関する規定については、
@ 労働協約、就業規則等に規定がある
A 転勤に関する曖昧な規定が就業規則に記載されている
B 規定がない
この三つのケースで考えます。
労働協約や就業規則に転勤に関する規定がある場合には、その規定に従います。規定に基づいた命令であれば問題が生じることはありませんが、例外的な命令を出した場合には、その規定を根拠にすることができませんので、無効になります。規定に反する命令をだすことはできません。
また、このような規定がある場合には、労働契約を締結する際には規定の内容を明示しなければなりません。
「業務の都合によって転勤を命令することがある。」程度の規定の場合には、すべての転勤命令が正当化されていましそうですが、過去の転勤の実績や各営業所等の労働者の配置状況、転勤による効果、労働者の職歴や経験などから総合的に判断することになります。
転勤に関する曖昧な規定しかない場合でも、就業の場所が特定されていれば労働者の同意がなければ転勤命令を出すことはできないとされています。
転勤に関する規定がない場合には、
転勤をさせる合理的な理由と必要性
労働者の合意
労働者の生活を不当に侵害しないこと
対象者の選定方法と選定理由
誠意をもって説得すること
などが必要でしょう。このすべてが揃わなくてはならないと言う意味ではありません。例えば労働者の合意がなくても転勤命令が有効であると判断された判例もあります。このような点に注意しながら命令を出すようにしたら問題が生じた場合にでも説明がつくと言うことです。