Area.18(H1)  一等賞  【Bタイプ】

 

『ねぇ、ママ 見て見て…!』空が好きな少年は言った

『ほら、何か降りてきたよ』

『あれ何ていうの?』答えを聞いて少年は続けた…。

『へぇ、あれがゆきなんが。っで、どこからくるの?』

『お空の上って…?』

『ふ〜ん、雲の上か! じゃあ、雲はゆきのお家(うち)だね!』

 少年の疑問は会話の泉に湧き出した

『だったら あの中の誰がお家(うち)を飛び出した一等賞なの?』

 母親は返す言葉がない

『だったら あの中の誰が地面に消えちゃう一等賞なの?』

 母親は話す余裕もない

 そんな母親を少年が瞳の中に入れている間に

『あのゆき』は『このゆき』に変わり

 お家(うち)を飛び出した一等賞もわからないまま

 地面に消えちゃう一等賞は姿を消した

 そして、

 地面に消えちゃう末等賞(まっとうしょう)すらわからないはずの母親は

 それでもなお、少年の瞳の中で言葉と余裕を失っていた…。