蟻になる (其の二)
マサ(74才)
私がショックを受けて蟻になろうとした経緯は。
タクシー運転手をしていたときのお客さんで、あるホテルの社長さん
に請われて、其のホテルの送迎用バスの運転手に就職。
入社2週間位でたまたま自動車整備士(三級)免許を持っていたので、
車両整備管理者という大役を命ぜられたからです。
普通自動車整備士といえば、自動車会社、整備工場等で働く場合の資格
と思っていたのが、自動車に関係のない企業でもこの資格を必要とし
ていたことです。と言うことは、いろいろな資格、免許も本来の仕事
以外利用価値があり、これは努力し、勉強して資格、免許を取得した
者に与えられた、ご褒美か、各企業もこのような資格、免許を持って
いる人を幅広く求めているのでは。
よし私もいろいろな資格、免許を取得しよう。
が、待てよ今43才遅い、それに旧高等小学校卒業後3年制の工業学校
に入学、軍事教練と勤労奉仕でろくに勉強もせず、退学して陸軍特別
幹部候補生に志願、浜松の教育隊に入隊、「私の軍隊生活は戦没者に
申し訳ありませんが、官費旅行の様なものて、其の話は後日いたしま
す」。
上海で終戦、復員後5年制工業学校2年に編入できたのに、年齢、生活
を考へ学業を断念したので、学力は実質高等小学校卒、これでいろいろ
な資格、免許に挑戦するのは、無謀。
しかし、個人タクシー開業の聴聞会に出席準備中の転職に文句も言わず
笑って許してくれた妻、子供のためにも頑張らなければ。
よし。今までの生活を変えよう、そうだ、蟻になろう、キリギリス的
生活にお別れだ。
早速簡単な危険物取扱者「乙4」に挑戦、昭和48年取得「45才」
この年、別の事業所に主任として配属になる、入社3年目で主任に昇進
うれしい。だがこの職場に電気設備が多く、フイードバック、サーマ
ルリレー、など聞いたこともない言葉、専門語、ばかり、これでは主任
として勤まらない。よし、つぎは電気工事士、中学生の息子に数学の
教科書を借りて勉強、実技試験はどんなものか分からないので、工事
会社の方に配線の結線法、バインダーの締め方、器具の取り付けなど
にいろいろ教えていただき、パイプベンダーやダイスなどお借りして
猛特訓。
勉強の甲斐があって学科試験は合格。
次は実技試験、設計図を一枚渡され、2メートル四方位のパネルに器具
を取り付け配線していく、電気工事の経験のない素人の悲しさ、試験
終了時間まで約8割の出来、2割も出来なくては不合格か。試験官の
考課「80%位か、器具の取り付け良し、配線良し、配管、ベンド良し、
完成してないところを差し引いて、80点、合格。
やった。 ☆☆☆☆☆
電気工事士免状 昭和49年 取得 「47才」
この試験場で電気工事士免状を持っていると、消防設備士試験で50%
試験免除になる、と話しているのを聞いたので、調べてみると電気関係
はすべて免除になる、早速消防設備士試験に向かって出発進行。
消防法、施行規則等毎日読みノートに取ったり、ホテルに行っていろ
いろ消防設備を調べ悪戦苦闘
消防設備士(甲種2、4、6、7、類)免状
昭和50年 取得「48才」
この年消防法が改正になり、年1回、特定建築物の消防設備の点検、
検査を行い、其の結果を消防長に報告するよう義務付けられた。
そのため消防設備点検資格者制度があり、免状取得には有資格者
「消防設備士、電気工事士、1級建築士、電気主任技術者等の免状
所持者」が講習を受けペーパー試験の上免許を取得出来るとのこと。
早速講習を受ける。
消防設備点検資格者「1、2種」免状
昭和51年 取得 「49才」
この年、ホテル増築の話が持ち上がった。増築後床面積は6000平
米、設備関係の本で5000平米以上の特定建築物は建築物環境衛生
管理技術者の選任を要すと読んだことがある、調べてみると其の通り
次はこれだ、が参考書が無い、保健所環境衛生課の係りの方に伺って
みると、これが大変、水道法、消防法、旅館業法、建築基準法、電気
設備基準、水質汚濁防止法、大気汚染防止法、清掃及び廃棄物処理法
その他関係法令、鼠、衛生害虫 等の生態及び駆除法、消毒薬の種類
とその化学式等。
なんちゅうこった、出来るはずがない、が、意を決して休日に図書館
へ。だが分からない、何はともあれ受験してみようと願書提出、受験、
何だこれは、6科目のうち午前9時〜12時3科目60問、午後1時
〜4時3科目60問、1問当たり2分、無理、無理 案の定不合格。
昭和52年、猛勉強が始まる、再度チャレンジ。
10月妻より会社に電話あり、「厚生省より書類が来てるよ」
「え・・・封を切って中を見てくれ」
「厚生大臣より合格証書よ、よかったね、おめでとう」
「ありがとう」、妻も心配してしてたんだ。
事務所にふらりと専務が入ってきた、
「実は君にホテルに帰ってもらいたいんだ」と机の上の官報を見て
「どうしたの官報など見て」
「私の名前を見てたんです」
「え・・どれどれ、あ、合格・・・やっぱりホテルに帰ってもらうよ」
またホテル勤務だ。
建築物環境衛生管理技術者免状 昭和52年 取得 「50才」
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「8月21日号掲載」
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