羽化不全対策のあれこれ


 

      クワガタの飼育をする上で、大型の作出はブリーダーの夢です。

      皆さんギネスを目指して日々努力している事でしょう。近年は菌糸瓶の品質も改良に改良を重ね、

      幼虫を大型化させる事は容易になってきました。しかし、幼虫の大型化と共に一つの問題が表面化

      してきました。そう、それが羽化不全です。

      厄介な事に、蛹が大きければ大きいほど羽化不全の確率が高くなっていきます。

      特にドルクス系アンタエウスのように体幅があるものは、蛹時の体重は他の同サイズのクワガタよりも

      重いはずです。アンタエウスの場合、ブリード物だと80oという数字が一つの壁になっているのが

      現状です。80o前後が狙える蛹は、羽化不全を起こす確率が菌糸瓶に入れたままだと20〜30%

      ぐらいまで上がり、蛹室の場所次第では50パーセントまで上がる事もあります。と言うのも、蛹が羽化

      する3日ほど前から肛門部から体液を排出しますが蛹室を瓶底に作った場合は、排出した体液の

      逃げ場所がなく蛹室の底に溜まってしまいます。

      その体液は想像以上にベタベタしており羽化中の羽などについてしまうと羽がきれいに閉じず

      羽化不全を起こす原因になります。また、瓶底に蛹室を作った場合、蛹を支えているのが硬い瓶の

      ため上羽の付け根付近(小楯板)が蛹自体の重さで広がって(潰れて)しまい、羽化時にうまく上羽を

      閉じる事が出来ない事があります。

      では、本題に入りますが、このような大型の蛹の羽化不全を防ぐにはどうすれば良いか?

      今回は、今一番羽化不全が問題になっている(私の中で)アンタエウスについて、今まで私がとって

      きた方法を紹介します。

 

  1. 幼虫を材に投入する。

      アンタエウスは自然界では70o後半〜80o前半が普通に採取されていますが、このサイズが羽化

      不全で発見された例はあまりありません。羽化不全の個体が長生き出来ない(蛹室から出られない)

      のも予想できますが、それを差引きしても大型個体が高い確率で無事に羽化していると考えられます。

      その自然界により近い環境(材の中)で羽化させれば羽化不全を防げるのではないかと思うのです。

      材への投入方法として、材に穴を開けて強制的に幼虫を投入する直接方法と、材をマットに埋めて

      マットに幼虫を投入し、幼虫が自分から材に入るのを待つ間接方法があります。

 

     直接方法

      用意する物: 材が入る容器(コンテナなど),材(出来れば直径20cm以上),腐葉土

      1.材を水に浸し適度に加水する。

      注意事項: まず、材の選択ですが、それまで飼育しているマットと同質のものを使うようにします。

       太さは出来るだけ太いもの(直径15cm以上)を使用して下さい。

       粗悪な材を使用すると幼虫が外に出たり、最悪の場合なじまずに死んでしまう事もあります。

       例えば、オリジナルのクヌギorナラマットで育った幼虫の場合、材もクヌギorナラにするのがベストです。

       又、シイタケのホダ木よりオオヒラ茸材かカワラ茸材、ナラだと霊芝材をお勧めします。

       いずれも良く朽ちた柔らかい材を使うようにして下さい。(クルビの場合は硬目を選択)

       同じ様に菌糸瓶飼育していたものなら、オオヒラ茸系ならオオヒラ茸材をカワラ茸系ならカワラ茸材を

       使います。尚、材の表皮は剥がないでそのまま使うようにします。

       加水した後で1度、材の表面が乾く程度に材を干しましょう。これは、材の水分過多を防ぐためです。

       

      2.容器に腐葉土を3cmほど敷き詰めておく。

      注意事項: 容器に入れるものは、材の乾燥を防ぐものなら何でも良いです。

       腐葉土は、レンジで殺菌した後で入れた方が良いでしょう。又、良質のマットは入れない様にしましょう。

       幼虫が材から出てしまいます。

 

      3.材の側面(切断面)に幼虫が入る程度の穴を開けて幼虫を投入する。

      注意事項: 材への投入時期ですが、終令中期〜後期が良いと思います。

       材に穴を開けたら、幼虫を入れる前にそれまで飼育していたマットを入れてから幼虫を入れます。

       これは環境が変わった事によるストレスを少しでも軽減させるためです。幼虫を投入後も使用していた

       マットで穴を埋めます。そしてに幼虫が外に出ないように、穴が開いた側面を容器の側面につけて蓋を

       した状態にします。

 

      4.幼虫の入った材を容器に入れた後、腐葉土を材が埋まるまで入れる。

      注意事項: 2と同じ。セットが完了したら、害虫が入らないようにキッチンペーパーなどで中蓋をしてから、

       蓋をするようにして下さい。又、埋めこみマットが乾燥しないように管理する事が大切です。

 

     間接方法

     用意する物: 材とマットが入る容器,材(出来れば直径20cm以上),マット

       方法としては、直接方法と同じです。ただ、容器に入れるマットはそれまで飼育に使用していたものと

       同じ物を使います。オリジナルマットで育った幼虫にはオリジナルマットを、菌糸で育った幼虫には

       同質の詰め替えブロックを使用すれば便利です。

      注意事項: 間接方法の場合、幼虫がどこからでも材に潜れるように材の表皮はきれいに取り除いて

       使います。

       マットは出きるだけきつく詰めるようにします。間接方法の時は材が3cmほど埋まるくらいマットを上か

       らきつく詰めます。幼虫を投入する場所ですが、私は材の側面にスペースを取りそこに入れるようにし

       てます。菌糸飼育の場合、乾燥には十分気を付けてください。

       間接方法の場合、幼虫が材に入らずマットに蛹室を作る事があります。

 

 

  2. 蛹を取り出して人工蛹室で飼育する   

       蛹にとって快適な環境を作るため、人工的に蛹室をつくり移し変えてあげます。特に、蛹室内に

       キノコが発生した場合は速やかに人工蛹室に移し変えて下さい。私の経験上、ある程度蛹の体重を

       吸収できるように蛹室は柔らかめに作った方が良いと思います。人工蛹室はいろいろな方法で作られ

       ていますが、今までに私が試した人工蛹室を紹介します。作り方が説明しにくいので画像を付けます。

 

     ティッシュを使った人工蛹室

       つい最近まで私がとっていた方法です。。経済的で短時間で出来るので便利です。

       低コストで出来るんですが、見た目が悪く蛹の動きでティッシュがボロボロになる事があります。

      用意する物: 容器(ミニケース,プリンカップなど),ティッシュペーパー,スポンジ(厚さ1cmぐらい)

       作り方

1.容器の底に濡らしたティッシュペーパーを2〜3枚敷く。
2.容器内に、細長いドーナッツを作る感じで濡らしたティッシュペーパーで

  基礎を型取ります。

* これが蛹室の基礎になるので、蛹の成虫時の大きさを予想して作りましょう。

  私の場合、成虫時の大きさより2p余裕を持った大きさにしています。

  基礎の高さは、高いほど良いです。目安として蛹がはみ出さない程度にします。

3.湿らせたティッシュペーパーを基礎の上に蓋をするように掛けて蛹室になる

  部分を押し込みます。この作業を数回繰り返して仕上げます。

* 出来上がったら、いったん乾燥させたほうが紙の繊維同士がくっつき合い

  丈夫な蛹室が出来ます。

4.蛹を入れる前に、動かない様に周りの隙間を埋めて固定ます。

* 蛹室内が乾燥しないように適度に湿度を調整してください。

  但し、蛹室内が湿り過ぎると羽化不全を起こすので注意しましょう。

 

     オアシスを使った人工蛹室

       オアシスとは、生花などを固定するスポンジ状のもので、花屋とかホームセンターなどで1個250円

       前後で販売されています。オアシス1個で、蛹室2個分あります。

       ティッシュより見た目も良く結果も良好で何度でも使えるので、私は今はこの方法でやってます。

      用意する物: 容器,オアシス,スプーン(大)(小),カッターナイフ

       作り方

1.蛹室の大きさを想定して、適当な大きさにカッターナイフで切る。

*オアシス一個で二つ分出来ます。

*上手く使えば、表裏に違う大きさの蛹室を作る事が出来ます。

 そうすればオアシス一個で4個の蛹室を作れます。

2.スプーンで中を削り取る。

*簡単に削る事が出来るので、力の入れ過ぎに注意する事。

3.仕上げに、角張った部分を削り取りきれいな曲面にします。

*指の腹で蛹室内をなぞって凹凸がないか確認します。

4.人口蛹室を容器に固定して蛹をセットする前に、蛹室を十分加水して、

  蛹を入れます。乾燥には気を付けて下さい

*加水し過ぎた感があっても、蛹室が吸収してくれるので大丈夫です。

 

 

   3.出来れば瓶内の蛹室で羽化させたい場合

       「蛹を取り出すのは少し不安だ。人工蛹室で羽化させるのは自信がない。」と、言う方もいると

       思います。そういう方は、現状の瓶内の蛹室で羽化不全を避けるために、少しでも不安要素を

       解消していきましょう。

      瓶底の蛹室

       瓶底に蛹室を作った場合は、思いきって瓶を逆さまにしましょう。蛹も菌糸も呼吸しているので蛹室に

       炭素ガスが溜まる可能性もありますが、今までそれで蛹が死亡した例はありません。

 

      菌糸が劣化した状態での蛹室防止

       菌糸(マット)が劣化した状態で蛹室を作った場合、蛹室はおろか周りのマットまで泥状になり

       ベタベタになります。

       この様な状態で羽化したら、羽化不全を起こす確率が高くなります。それを防止するために最終

       瓶交換の時期を蛹化する2〜3ヶ月前に交換しましょう。そうすることで瓶内の環境が一番良い状態

       で蛹室を作る事が出来ます。瓶交換の時期を上手く行うには、経験とデータが必要です。

       種類によって孵化〜蛹化までの時間が違うのでデータを残し学習するようにしましょう。

       もし、蛹化時に菌糸が劣化した場合は、人工蛹室に移すか、菌糸瓶上部を掘り返して露天に

       する方法も有ります。

      私の飼育しているインドアンタエウスの交換目安

       初令を900mlに投入→4ヶ月後1500ml→2〜3ヶ月後1500ml→2〜3ヶ月後1500mlの

       4本目で蛹化蛹化まで10〜13ヶ月かかります。菌糸瓶はアドバンスを使用。

 

       瓶交換を上手く行う自信がない方は、3回目の瓶交換の時に出来るだけ容量の大きい瓶

       (出来れば2リットル以上)に交換して下さい。それ1本で、羽化まで大丈夫だと思います。

       又最近は、羽化不全しにくい菌糸瓶も販売されていますので、それらを利用するのも一つの手です。

 

       以上、簡単ではありますが皆さんの参考になればと思います。ならないか?

 


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