なる牝牛〜アウドムラ〜

投稿者 人形男爵


 全長317m、全幅524mという超巨大輸送機ガルダの内の1機「アウドムラ」はカラバの拠点として活躍したことで広く知られている。

 その語源は北欧/ゲルマン神話に登場する巨大な牝牛「アウドゥムラ(アウズンブラ、アウズフムラ)」である。その字義は「肥沃なる黎明」または「養うもの」。

 北欧/ゲルマン神話において原初、世界は底も知れぬ虚無の深淵「ギンヌンガガプ」だけであった。しかしある時、ギンヌンガガプの北に「ニヴルヘルム(霧の国)」または「ニブルヘル(霧の冥府)」と呼ばれる国が現れ、そして南にも「ムスペッルスヘイム(炎の民の国)」が現れた。ニヴルヘルムから飛来した氷と霧がムスペッルスヘイムから飛び散る火花が溶かし、その水滴が凝固し「イミル(ユミル、両性具有者の意)」という巨人が誕生した。そして次の水滴から誕生したのが巨大な牝牛アウドゥムラ。イミルはアウドゥムラの乳房から4つの河になって流れ出る乳を食料として成長した。アウドゥムラの方は塩分を含んだ氷塊を舐めて生きていたが、やがて氷塊の中から神々の祖「ブーリ(食料庫)」が現れた。そしてブーリの息子「ボル(船倉)」がイミルから生まれた「霧の巨人族」の娘ベストラと交わって誕生したのが、「オーディン(激怒、狂乱)」、「ヴィリ(歓喜、欲望、願望)」、「ヴェーイ(悲嘆)」の3柱神。オーディンらはイミルに戦いを挑み、ついに彼を殺した。イミルから流れ出た血がギンヌンガガプを満たし、それが海となリ、そしてオーディンらはその上にイミル の身体を解体し、世界を創造した。アウドゥムラがどうなったのかは神話では語られていない。霧の巨人族がイミルの血に流されて溺死していることから(ただし1組の巨人夫婦は生き残り、霧の巨人族を再興している。その後巨人族はオーディンらアース神族に戦いを挑むが、これがラグナロク=神々の黄昏と呼ばれているものである)、同じように海の藻屑に消えたのだと思われる。

 神々と敵対する巨人族とは、まさしくギリシア神話における巨人族「ティターン」そのものである。この巨人族ティターンは言わずと知れた「ティターンズ」の語源。牝牛アウドゥムラは巨人族を倒した神々の祖ブーリを助けたわけだが、輸送機アウドムラはティターンズを倒したエゥーゴを助けたカラバに運用されるのは当然であるとも言えよう。また牝牛アウドゥムラは巨人族の祖イミルも育てたわけだが、輸送機アウドムラがティターンズの祖、地球連邦軍において開発されたのを暗示していると強引に読み解くこともできよう。

 さて、アウドムラ、スードリ、メロウドは四方を守る神の名にちなんでいると解説されている。アウドムラが牝牛「アウドゥムラ」であるのならば、以上のようにまったく方角とは関係ないということになる。これはどういうことであろうか? スードリ、メロウドの語源の究明と共に今後の研究課題である。知っておられる方はご一報願いたい。ただ北欧/ゲルマン神話において四方を司っているのはイミルの死体にわいた蛆から誕生したドヴェルグ(=ドワーフ)小人「アウストリ(東)」、「ヴェストリ(西)」、「スズリ(南)」、「ノルズリ(北)」であり、神話的世界観では四方に立つ彼らが天球(天空)を支えていることになっている。スードリの語源は案外このスズリかもしれない。

 今回のはあまり面白くありませんね。とりあえず宿題の提出ということで。


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