MS−14系MSのスラスター推力に関する考察ver.0.91


 MSのスラスター推力は、当然のことながら局面によって異なる算出方法が用いられる。各スラスターを「主に推進を司るもの」と「姿勢制御を司るもの」に分け、主推進ノズルの推力のみを合算した「主スラスター推力」や、それらを敢えて分けず一律に計上した「スラスター総推力」等、場合によって使い分けるのが本来の用途である。しかるに、近年こうした数値が基準を無視したまま一人歩きを始め、各機の性能比較に使われることによって、少なからぬ混乱が発生している。
 そこで、ここではそれぞれ異なる基準で算出されたデータを一律に比較するため、若干の加工を加えることでそれを可能にしようと試みる。公表されていないデータは推定で補っているが、それらは逐次解説を加えていくこととする。それでは実際に数値を挙げてみよう。

型式番号 スカート内 基数 小計 足フレア 基数 小計 Bパック 基数 小計 増設分 基数 小計 推定総推力
MS-14A 2500 5 12500 24500 2 49000 61500
MS-14B 2500 5 12500 24500 2 49000 4600 4 18400 79900
MS-14S 6180 5 30900 24500 2 49000 79900
MS-14F 21000 5 105000 20500 2 41000 7000 2 14000 160000
MS-14Fs 21000 5 105000 7000 2 14000 20500 3 61500 7000 2 14000 194500
MS-14JG 21000 5 105000 7000 2 14000 24500 3 73500 7000 2 14000 206500
MS-14J 21000 5 105000 28300 2 56600 15700 6 94200 255800

※赤い欄は推定による

 各数値について、MS-14A、B、Sは明確な内訳が発表されていないため、各型の比較によって推定したが、その計算式は以下のとおりである。

■79,900kg(MS-14B総推力)−61,500kg(MS-14A総推力)=18,400kg(B型バックパック総推力)
■18,400kg÷4(ノズル基数)=4,600kg(ノズル1基あたり推力)

 また、MS-14Aの推力内訳は『B-CLUB VISUAL COMIC GUNDAM 0080 vol.2』を参考にした。同資料の「24,500×2 2,500×5」という記述から、足首フレア内ノズル=24,500kg×2基、スカート内ノズル=2,500kg×5基と判断する。

 MS-14Sについては、数値の増加分を補助スラスターの設置に求めず、スカート内主スラスターの強化と解釈した。あるいは数値の類似からMS-14Bとの混同もあり得るが、他の資料があるわけでもなく、ここでは敢えて強化説を採った。
■79,900kg(MS-14S推力の合計)−61,500kg(MS-14A推力の合計)=4,600kg(スラスター強化分)
■{12,500kg(標準スカート内スラスター推力)+4,600kg(スラスター強化分)}÷5(ノズル基数)=6,180kg(ノズル1基あたり推力)

MS-14A、B、Sの数値にについては、おおよそ以上のようにして求められる。

 次にMS-14F、Fsの比較から、7,000kg×2、7,000kg×4の差は、Fs型の脹脛部増設スラスターにあることがわかる。
 また、F型の7,000kg×2が「主スラスター推力」に計上されていることから、おそらくスカート内ノズル及び背部バックパック等の主推進機と同軸に装備されているノズルであることがわかる。この条件に当てはまるスラスターとなると、リアスカート後端に装備された2発のノズルしか考えられない。この2発のノズルはMS-14F、Fs、J各型に共通しており、装備位置・形状・時期などから考えて、ほぼ同じものであったと推測できる。そのため、ここでは全く同じものであったと仮定して数値を算出している。
■21,000kg(スカート内ノズル)×5(基数)=105,000kg(スカート内ノズルの総推力)
■20,500kg(バックパック・ノズル)×2(基数)=41,000kg(バックパック・ノズルの総推力)
■7,000kg(増設ノズル)×2=14,000

 F、Fs、JG等の機体では、足首装備のスラスター推力が著しく低下しているが、これはノズルの基数が1基に減少したためであろうと思われる。文献資料中に1基であるとする記述が見られないため確証はないが、ここでは1/144MS-14JGのキットを参考にしたい。

 J型をA、B、S系列の発展型と考えるか、F、Fs、JG系列の発展型と考えるかによって、スペックに現われない推力の算出方法が異なってくるのだが、F型とのバックパックの共通性や、肩フェアリングのスリット等から考えて、J型はF型ベースの発展機と解釈した。そうなると、スカート内スラスターはF型並みの数値が想定できる。バックパックについては、良く見るとあまり推力に貢献していないことがわかる。なお、F型にも装備されている小ノズルが2基確認できるが、これについてはF型の項でも特に計上していないため、J型の項でも敢えて採り上げていない。これにかぎらず、それほど推力に貢献していないであろうもの、純粋に姿勢制御用のもの等は、考察の本質と関係ないため、かなり省いていることにも注意してほしい。また、足の裏に装備されたスラスターについても、古い機体については明確な設定が存在しないため、今回は割愛した。初期の機体は2基、F型以降は1基の装備と思われるが、これといって確証はないのも事実である。
 なお、数値を比較していて面白いことに気が付いた。MS-14F「ゲルググ・マリーネ」とMS-14J「リゲルグ」では、主推進機のニュアンスが180度転換しているのである。MS-14Fの主スラスター推力は、バックパックの20,500kg×2発とリアスカートの7,000kg×2発の4発が計上されているが、これはどちらも推力ベクトルの固定されたスラスターである。これに対し、MS-14Jの移動用推進力として挙げられているのは、両肩のウイングバインダー内に装備された94,200kg×6発及び両足の28,300kg×2発という可動式のスラスターブームのみである。両機とも、それ以外に推進ノズルを備えていないわけではないのだが、「主推進機」の概念が全く違うのである。これは両機の設計思想、及び運用方法が全く異なっていることを意味している。
 一年戦争当時、主推進機は飽くまで固定式としながら、可動部末端に設けられたサブスラスターとAMBACにより姿勢制御する機動方法が主流であった。しかし、RX-78GP01Fbの可動スラスターポッドやティターンズ動乱期の可変MS・MAの登場以降、「高機動」のニュアンスが大きく変化したようである。可動式マニピュレーターは主に武装をホールドすることに用いられ、さらにムーバブルフレームの普及以降、大幅に自由度の増した作動肢構造は主推進機自体のベクトル制御を可能とした。これらの要件が揃った結果、一年戦争当時のMSは単にジェネレータ出力やスラスター推力といった目にみえるスペック以上に旧式化していったことが窺える。アクシズに搬入されたMS-14が近代化するには、「スラスト制御の抜本的変更」という、MSの設計思想にまで及ぶ発想の大転換が必要だったのであろう。

■結論
 確かにMS-14JGは高性能機である。主スラスター推力も尋常ではない。しかし、巷で言われている程に系列の中で浮いた機体でないことも事実である。数値的に飛びぬけて見えるのは、おそらくスラスター推力の計算方法が異なるからであり、問題は「どこまでを主スラスター推力と捉えるのか」という価値観の違いになってくるのであろう。
 むしろ、特筆すべきはF型からのスカート内スラスターの強化である。今回は「JG型と同等であろう」という判断のもと、同機の数値を単純に代入したが、これについては異論も多かろうと思う。だが、リアスカートの形状、後端の増設スラスターの有無等を見ても、FシリーズとJG型のそれは同一系統のものであると考える方が妥当であろう。そうすれば、飛躍的な性能向上が計られたのはF型からということになり、MS-14Fに対する戦場での評価ともうまくつじつまが合うのである。
 いずれにせよ、いわゆる「数値」は、有無を言わせぬ説得力を持つが故に、使用にあたっては細心の注意が必要であろう。考察に従事するものにとっては、数値の大小に目を奪われるあまりに、その本質を見誤ることのないようにしたいものである。

■おことわり
 この考察は、過去の資料のうち多くを文字資料に準拠しているため、「設定画が存在しないもの」等に関しては多少怪しげなものでも文字優先でやっております。先日も、さる方から「初期シリーズA,B,C各型についてはスカート内ノズルは3発ではないか」という指摘を頂きましたが、まったくその通りだと思います。「リゲルグ」のキット解説書を見ても、これは強く感じます。本稿の「×5」という数字は『B-CLUB VISUAL COMIC GUNDAM0080 WAR IN THE POCKET VOL.2』の記述を参考にしたものですが、自分自身かなり???です。それでも、この記述に他の解釈を当てはめ難かったため、さしあたって「×5」を採用したものです。スカート内には×3で、他の場所に×2が配置されてた線で現在再構築中ですが、「足裏ノズルの数」「フレア内ノズルの数」等、なかなか難しい点がありまして、今すぐ形になる類のものでもなさそうです。本稿を楽しまれる方は、あくまで参考としてお読み下さるようお願いします。


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