■「ジェダ」のこと


 地球連邦軍の外郭新興部隊「ロンドベル」に配備された各種装備は、艦艇からMSにいたるまで当時最新のものが充てられたが、結成当時から装備に恵まれていたわけではない。ジョン・バウアーの後援によって新鋭MS、RGM−89「ジェガン」の配備が開始されるまで、暫定的に配備されたMSがあった。これが「ジェダ」と呼ばれるMSである。「ジェダ」と「ジェガン」の技術的な相関関係は不明だが、アナハイム社独自開発による連邦軍正式量産MSはRGM−89が初とされていることから判断して、機体の設計に直接の関係はないものと思われる。この「ジェダ」はベース・ジャバーRS5にも対応しており、グリプス戦争期のMSに比して、空間戦闘時の航続距離は飛躍的に向上している。なお、「ロンドベル」へ引渡された機体は、クラップ級巡洋艦「ラー・ザイム」等へ配備されたことが判明している。

 さて、「ジェダ」は「ハイパス」「ジェイブス」等と並んで型式番号が判明していない数少ないMSであるが、グリプス戦争終結から90年代前半にかけての期間は連邦軍が正式機を比較的密に採用していた時期に当たるため、型式番号の推定は可能である。
この期間に採用、ないし試作された派生型を除く機体の型式番号は
RGM−86R「GMIII」
RGM−87「バージム」
RGM−89「ジェガン」
RX−90「μガンダム」
RGC−90「ジェガン重装甲」(RGM−90「ジェガン重装型」とも)
RGZ−91「リ・ガズィ」
RX−93「νガンダム」
RX−94「νガンダム量産型」
の順であり、分類記号は無視して数字のみに着目した場合、空き番号は「88」と「92」しか存在しないことがわかる。RGM−89が後継機「ジェガン」であることから、「ジェダ」には必然的にそれ以前の数字が充てられていたことになる。そうすると残る数字は「88」のみであり、当時の命名法から察するに「RGM−88」がふさわしいものと思われるが、どうだろうか?

 さて、RGM−88というと想起されるのが、雑誌『B CLUB』29号掲載の以下の記述である。

「…当初はガンダムMKIIの技術を多用した量産後継機として設計が行なわれていた。背部のバックパックも出力は劣るものの、ほゞGMKIIと同型のものが設けられる予定であった、ところが、連邦軍のMS開発予算の大幅な削減から、さらにコストダウンが要求された。そのため、開発チームはRGM-88Xのナンバーで、6機まで製作された試作機をあきらめ、これをベースとしたマイナーバージョンを製造することになった。RGM-88Xは試験中に1機が大破、2機が解体されたが、残る3機は、ロンド・ベル隊に試験配備された。」

 徳間書店版『逆襲のシャア』によると、「ジェダ」はおそらく6番機まで製造されており、そのなかの4機(3番機アムロ・レイ、4番機ジョー・セイ、5番機カニンガム・ショー、6番機オルヤン・ブロムクイフト)がクラップ級巡洋艦「ラー・ザイム」に配備されている。このうち5番機はエグムの「ガブール・ベルグソン式2型」によってロンデニオンの住居ブロックに墜落させられており、これが「試験中に大破」した1機だと思われる。また、劇中にはまったく登場しない1、2番機は予備機として解体されている可能性が高い。『B CLUB』RGM−88Xは明確に「ジェダ」を意識して書かれたものと思われる。
 以上、「RGM−88X=ジェダ」説は状況証拠としては出来過ぎであるが、問題はBクラブの記事がRX−78とRGM−79のようにRGM−88Xの性能を落としてRGM−89としたように読み取れる点にある。ハイストリーマーでは「ジェダ」は「ジェガン」に比してさらに非力なMSであるかのように描写されており、このあたりが今後の課題であろう。

 なお、この記事には続きがあり、
「ところが、RGM-89が実戦配備されると数々の欠陥が指摘された。その第一が装甲の貧弱さにあった、そこで、急遽、RGM-88XがRGM-90として採用され、局地戦用MSとして地球連邦軍の地球上の主要基地に配備された。RGM-89の総生産数は80機程度といわれ、RGM-90となった88Xも実数は40機程度といわれる。さらに生産ライン上にあった89の機体の一部装甲強化(部分的にガンダリウムを使用)とメインエンジンの改良を施したRGM-91Sが20機存在するといわれているが、正確な数は連邦政府高官のみが知るところで定かではない。…」
 という記述からは、RGM−90と良く知られたRGC−90とは別物のように読み取れる。だが、このRGM−90「ジェガン重装甲(型)」をベースに支援用として開発された機体がRGC−90「ジェガン・キャノン」だったとすれば、それなりにつじつまは合うのではないだろうか。


以上は「ジェダ」に関する私見であり、型式番号RGM−88は推定に基づくものである。型式番号等のデータを流用することによって発生したいかなる問題・損害に関しても筆者は責任を負いかねる。自己の責任で対処すること。


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