「MS−06Z」のこと


 MS−06Zにまつわる種々の文献のなかから、(変な意味でも)最も詳しいと思われるジオン軍ミリタリーファイルをテキストにもう一度この機体をおさらいしてみようと思います。そのため、以下は引用に注釈を付けるかたちを採ります。既にミリタリーファイルを持っておられる方には余計なものかもしれませんが、改めてCD−ROMを起動させるのは面倒ですし、長文は勘弁してやってください(^^)

●=「ジオン軍ミリタリーファイル」よりの引用文


●まずサイコミュによる簡単な機体制御をおこなう宇宙機が製作され、そこで得られたデータを基礎として、10月16日よりオールレンジ攻撃攻撃システムのテストベッドとしてのMAN−03「ブラウブロ」、加えてMSN−02「ジオング」のダウンスケール機であるMS−06Zの2機種の開発が平行して開始された。

 以上から、開発開始は10月16日だったことになります。異説が存在する場合には、適宜指摘してやってくださって結構ですが、さしあたって10月16日説を参考にします。

●現在、MAN−03は2号機まで完成、11月に入ってからはグラナダからコレヒドール暗礁宙域に場所を移し、サイコミュ攻撃端末コントロール時の各種データ収集を目的としたテストが実施されており、遠隔誘導攻撃端末による同時多方面攻撃法の完成にむけて各種試験がおこなわれた。
●次にMS−06Zだが、MS−06Fを改装した機体であるため、サイコミュシステムを搭載する際に胸部フレームの大型化など大規模な改装が繰り返され、同時に開発がおこなわれていたMAN−03に10日ほど遅れてロールアウトしている。

 この2つの文章から、MS−06Zのロールアウトが「ブラウブロ」のそれより10日遅れであったことが覗えます。また、後に引用するように、MS−06Zのテストが11月8日には既に行われているところから、「ブラウブロ」の完成は最低でも10月29日以前ということになります。つまり、「ブラウブロ」の開発期間は最大でも13日ということです。「戦時にそんなこと言ってられない」と言われそうですが、「お役所」な人間から考えれば、間に土日が入りますから、13日ってのは実質にして10日も無い、というイメージです(^^;)
 「ブラウブロ」への詮索はこのくらいにして、問題のMS−06Zの開発期間は23日以内ということになろうかと思われます。

●このMS−06Zはオールレンジ攻撃をおこなうために、メガ粒子砲を搭載した両腕をサイコミュ誘導攻撃端末として用いるが、MS−14のビームライフルなどの開発に投入された技術を存分に活用することで、片腕で5門のメガ粒子砲搭載を可能としている。
 これはジェネレータ出力の関係上威力の面では及ばないものの、MSN−02とほぼ同一の仕様であり、最も先行してノウハウを確立すべき箇所でもあったが、5門のメガ粒子砲を搭載するため腕部は大型化し、MSN−02のAMBAC機動バランスをシミュレートすることは実質上不可能となった。

 この表現を鵜呑みにすれば、当時研究段階からようやく実用段階に移行しはじめたエネルギーCAP技術を応用し、実際に発射可能なものが搭載されていたようです。ドムがビーム兵器をドライブできないところから考えて、ジオンのエネルギーCAP式メガ粒子砲の運用最低ラインが1300kW辺りであることは推定できますから、少なくともそれ以上のジェネレータを搭載していたことになろうかと思います。

●この機体の本格的なテストに備えて、実戦経験のあるパイロットの中でニュータイプとしての素養があると思われる3名を選抜し、サイコミュオペレーションのデータ収集に従事させていたが、11月8日のコレヒドールD4実験宙域において各種試験をおこなっていた同部隊は、サラミス級2艦、武装ポッド4機に加え、量産型と思われる敵モビルスーツ4機からなる連邦哨戒部隊と接触、テスト中のMS−06Zは護衛の2個モビルスーツ小隊とともに交戦状態に陥った。
●この戦闘では、敵部隊を全滅させ、MS−06Zの実戦データ並びに敵モビルスーツの残骸という貴重な資料が得られたものの、敵艦の艦砲射撃が実験部隊の母艦レムリアを直撃し、MS−06Zの2号機が大破したほか、整備機材や実験装置などが全壊。誘爆は免れたもののこれ以上の試験続行は不可能な状態となってしまった。

 この表現を解釈すれば、ボール含む連邦部隊8機とZタイプ×2(2号機は出撃していない?)+護衛小隊×2=8機で、ややジオン側が有利なような気がします。また、この時に護衛MS小隊がいた、ということはZタイプは「実は1機も撃墜してない」説を唱えることすら可能です。そんなの「興ざめ」ですが、そういうこじ付けも出来る、ということです。

 こんなこと言っておいてアレですが、個人的には、この時やっぱりZタイプは撃墜を記録していると思います。根拠は3号機のマーキングです。3号機の唯一の写真(って「絵」なんですけどね)を見ると、左肩に「★★」というマークが入っています。これは何を意味するのでしょう? 実際の軍用試作機などには「○号機」を示すために「○本の帯」等が描かれたりすることがあり、日本軍の試作機でもこれは確認できます。一瞬、「その手」のものかと思ったのですが、この機体は3号機です。それでは辻褄があいません。そこで思い付いたのが「撃墜マーク」という解釈です。もし「撃墜マーク」だとしたら、出撃していない2号機に描かれていなくともなんの不思議もありません。

 また、これらビショップ計画の試作3機はア・バオア・クー戦に投入されたことになっておりますから(MSN−01キット解説参照)、「撃墜マークはこの時の戦果を記入したものであり、コレヒドール遭遇戦の戦果ではない」とする反論も可能でしょうが、それならば実質的に「一年戦争最後の日」となったア・バオア・クー戦の戦果を、「誰が」、「いつ」機体に記入したのでしょうか? おかしなことになりますよね? やはり「コレヒドール遭遇戦」の戦果だと思いたいのですが、どうでしょうか?

●さらに、MS−06Zが期待したとおりの機動性を発揮しなかったことをうけて、大破した2号機の脚部を「宇宙戦用」のMSN−02の仕様に準じた大推力スラスターに換装し、現在は高機動戦闘テストに投入している。

 そもそも、当初から高機動型に改装されたのは一貫して「2号機」なんですが、MSN−01の解説書では「このMSN−01とMS−06Zの2、3号機はア・バオア・クーへ移され戦闘参加した記録が残っている。」とされています。困った表現なんですが、誤記としてしまって良いものでしょうか? また、型式番号論ですが、MS大全集系の資料「EB.1」や「MSエンサイクロペディア」、それに「データコレクション3」では「MS−06Z−3」と紹介されています。これはいったいどういうことなんでしょう? まさか「3号機だから−3」とかいう短絡的な理由ではないでしょうね?(笑) 何度も言うようですが、それではガンキャノンなど、「−2」や「−3」内でも複数機が存在する機体はどう解釈するのでしょう? こういう勝手な型式番号の与え方をされると困るんですが、無理に解釈すれば、この機体はア・バオア・クー戦時の機体であって、種々の改良が加えられたMS−06Zとして「ヴァージョン3」に当たる機体だった、ってことでしょうか。

 それにしても、MS−06Zのキット解説では、当初製作されたのは「MS−06ZAタイプ」ということになっています。つまり、コレヒドールで実戦をやらかした段階でのMS−06Zは「A型」だった、ということになろうかと思われます。つまり、最初から「A、B、C〜」的なネーミングだったことになり、「−1、−2、−3〜」的なニュアンスではなかったことが推測されます。

 あるいは、一つの考え方として、最初の状態は「MS−06Z/A−1」という型式だったとも想定できます。この方式であれば、「組みあがった最初の状態」が「A−1」、これに「キアM−33系」メガ粒子砲(MSN−02パーフェクトジオング解説書参照)を搭載した実戦テスト機(コレヒドール時)が「A−2」、この時の教訓を取り入れて若干の改修を施したア・バオア・クー参加時の機体が「A−3」ということも考えられます。さらに、11月26日にMSNナンバーが制定されるまではMSN−01も「MS−06Z○○」と呼ばれていたハズであり、その際の型式番号が「ブースター型」という意味も含めたダブルミーニンング(ゲルググ等でおなじみ)で「MS−06Z/B−1」といったモノだったのではないでしょうか? これが11月26日以降、「MSN−01」となったため、「A」とか「B」とかの分類が不用になり、結果的に「MS−06Z/A−3」が「A」を抜かれて「MS−06Z−3」とされた、ってのはムリがあるでしょうか?(^^;)

●このMS−06Zの2号機は、11月26日にサイコミュシステムを搭載するモビルスーツの型式種別を「MSN」、同モビルアーマーを「MAN」と変更したことをうけて、「MSN−01」へと型式番号を改めた(MS−16からMSN−02へのナンバー変更もこの時期である)。

 この文章も極めて情報量が多いと思います。「MSN/MAN」ナンバーは11月26日制定みたいですから、逆に言えばMSN−03「ブラウブロ」などの「MAN」系も11月26日までは「MA−○○」だったことになります。MA−04X「ザクレロ」、MA−05「ビグロ」、MA−06「ヴァルヴァロ」、MA−08「ビグザム」、MA−09「量産型ビグザム」とくれば、「ブラウブロ」の"落とし所"はMA−07くらいしか思い付きません。もちろん、MAN−08「エルメス」も11月26日以前に計画がスタートしていればMA−○○ナンバーを貰っているべきですが、この機体の方がMANナンバーでも数字が下ってますし、MA−10以降でも問題はないと思います。

 ダラダラと思うことを書いていったら、またバカみたいに長文になってしまいました。とにかく、今回はMS−06Z開発史の叩き台的なものを目指して一気に書き上げてみたので、「種々の資料に目を通す」というよりはコアな資料数点をメインに考察してしまいました。いずれ、食い違う資料等が出てくると思いますが、一応これが現段階での折檻のMS−06Z観です。この機体は位置づけが面白いので、この後も追跡調査していきたいと思います。皆様の協力をお願いします。


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