FRPでマスクを作る 

   ここでは、FRPマスクを作る過程を紹介していきます。なにしろ恐れを知らない素人なので、いろいろと失敗やおかしな部分があると思いますが、そういった部分も含めて、これからFRPマスクを作ろうという方のご参考になればと思います。  

     まずは、かつらなどを展示するための発泡スチロール性の頭の模型(?)を買ってきます。(東急ハンズで500円ぐらい) ただし、その模型は普通の人の頭のサイズからするとずいぶん小振りにできているので、油粘土を盛って人の頭と同じぐらいのサイズにしていきます。油粘土は発泡スチロールには食いつきにくいので、最初に発泡スチロールに包帯を巻いて、その上から油粘土を盛ってみましたが、あまり効果はありませんでした。(まあ、何もしないよりは良い程度かなと) 結局、油粘土を一通り盛ってから、粘土が浮いたり落ちたりしないように、幅の広い糸などを巻いて固定してから本格的な造形に入りました。
 今回発泡スチロールの頭部模型を用いたのは、時間がなかったためですが、ボール紙と新聞紙などを使って実際にかぶる人の頭部のサイズに合わせた張りぼてなどを作った方が良かったかもしれません。今回も結果的に粘度原型が小さくてFRPで型どりした後に急遽修正などといった後処理が必要となってしまいました。 
 

     徐々に粘土を盛って形を作っていきます。粘土は東急ハンズで購入したLEON粘土の中硬(黄)を使いました。エッジとかを立たせるにはある程度硬いのが良いかなあと思った結果です。ちなみに、一番硬いタイプは特に冬場などはあまりに硬すぎて使い勝手が悪いので、中硬を選択しました。(別項で述べる怪獣モデルでは、いろいろと事情があって、硬いタイプを使用しました。しかし、やはり扱いにはずいぶん苦労があったようです) このLEON粘土は1キロで560円。今回は10個ほど購入しています。たぶん、普通の文具店やホームセンターで売っているような小学生が使う柔らかい油粘土でも良いのではないかと思います。私が15年ぐらい前にマスク用の原型を作ったときには、そのような教材用油粘土を使いました。ただし、教材用油粘土は、今回使用したLEON粘土に比べてかなり柔らかく、細いエッジを立たせたりするようなことは難しいかなという気がします。    

    頭部の角とかを作った状態です。   

 

   このような形で粘土原型が完成しました。さて、この原型を前にしてまず思ったのが、角の部分をどうやって型どりしようかということでした。
 角がなければ単純に前後2分割か、前後と上部の3分割ということになるのでしょうが、角がある状態では前後はまず無理。上下で分けるにしても角の付け根の部分が逆テーパになってしまう上に、かなり深い型になってしまいそうでした。経験上、多少の逆テーパや穴などは無理矢理FRPで抜くことができますが、それにも限度があります。FRPを抜くときに石膏型を壊してしまっても良いというのであれば、かなり無理もできるのですが、今回は最低でも2つは同じマスクを作成するつもりでした。 
 

     結局、角を別パーツとして型どりすることにしました。これは角を切り取ってしまった状態です。他に選択肢はなかったと思うのですが、角を別パーツにしてしまったことで、余計な労力が増えてしまいました。    

     分割はモデルのデザインを考慮して顔の部分(前部)、冠状の頭部(上部)、後頭部(後部)の3つとしました。まずは上部の型どりから始めます。今回のモデルは、頭部が冠状になっており、その部分が独立したようなデザインになっていました。そこで、冠の境界部に分割ラインを設けることにしました。分割ラインに沿って、0.3mm厚のプラ板を差していきます。プラ板の間に隙間ができないように、布テープを貼りました。後になって気づくのですが、石膏はプラ板に全く食いつかず、後で分離が簡単にできるのですが、布テープや紙は石膏と融着してしまい、分離が困難な場合があります。このため、分割ラインにはできるだけプラ板を用いた方がよかったように思います。    

     上部に石膏を盛っています。石膏は、ホームセンターで売っている2kg 600円のものを使いました。今回のマスクではこの石膏を4袋ほど使用しています。大型の紙コップや紙洗面器などで石膏をといていきます。本当は、水と石膏の適切な割合をきちんとはかっておいて、常に同じ状態の石膏を作成できるようにしておくのがよいのですが、そこつ者の私は、フィーリングで石膏をといていきます。水っぽくなく、かといってどろどろというほどでもないといった程度まで石膏と水を混ぜ合わせ、粘土原型の上に盛っていきます。
 石膏は、意外にすぐ固まってしまいます。このため、石膏をかたくねってしまうと、作業時間は思ったよりも短くなる場合があります。写真では、ずいぶん大きな洗面器で石膏をといていますが、作業がはかどらず、結局1/3ほどは使用する前に固まってしまいました。かといって、水っぽいと粘土に盛ることができずに流れ落ちてしまいます。このあたりのかねあいが難しいところですね。原型が小さければ、原型の回りに枠を作って、石膏を流し込むということも可能です。(別項の怪獣モデルでは、いくつかのパーツでこの方法を用いています) しかし、さすがにモノがこんな大物になってしまうと、枠を作るわけにもいかないので、石膏を盛っていくという方法を採用しました。
 石膏を盛るときに注意しなければならないのは、薄いところを作らないということです。薄いところがあると、型をはがすときにそこから割れてしまいます。(今回もそれで苦労しました) 乾いたら盛るという行程を何度か繰り返して、できるだけ均一の厚さに盛っておくことが必要です。  
 

    上部に石膏を盛り終えた状態です。    

     前・後部の間にも分割ラインを作って、同様に前部に石膏を盛りました。ここで、今回の失敗を一つ。分割ラインを作るのに使用したプラ板をこの時点で抜き取ってしまいまったのですが、これが失敗でした。石膏同士も食いつきがよく、離型剤を塗ってはいたものの、くっついてしまったのです。このため型の分離が非常に困難になってしまいました。プラ板をそのまま残して、型を分離するときにプラ板を抜き取るという工程にすべきであったと思います。
 
 

    後頭部にも石膏を盛りました。    

     角の部分は別パーツとなります。前述の工程と同様に、プラ板で分割ラインを作り、石膏を盛っていくという作業を行います。(今回は、角が多くて大変でした…)    

     石膏が十分乾燥したら、型を外します。分割部に適当なもの(私は幅20mmほどの帯状の鉄板を使いました)を差し入れて、ゆっくりと型を外していきます。このとき、薄いところがあると、そこで型が割れてしまうことがあります。もしもヒビが入りそうだったら、一旦作業を中断して、割れかけたところに石膏をもう一度盛ってやる必要があるかもしれません。前述のように、今回は分割ラインのところにあったプラ板を早い段階で外してしまったので、まず分割部に鉄板を差し込むのに苦労しました。プラ板がそのまま差してあれば、プラ板を外してできた隙間に鉄板を差し込めたと思います。(実際、怪獣モデルではそのようにして作業しました)
 今回は型を外す作業にかなり苦労しました。(一時は、もうダメかとあきらめかけたほどです) 上部は、その作業の過程で写真のように二つに割れてしまいました。  
 

     前部は、特にトラブルもなく、うまく型を抜くことができました。    

     後部は、かなりバラバラになってしまいました。後で、その断片をつなぎ合わせて修正することを試みましたが、どうもひずみが出てしまったようです。(いろいろあって、結局最終的にはこの後部パーツは使用しませんでした)    

     油粘土は、石膏に食いつかないため、離型剤を塗らなくてもキレイにはがれてくれます。角の部分はこのように型を作ることができました。
 石膏型に傷ができたり、気泡があったりする場合は、石膏や油粘土で埋めることで対処しました。  
 

     いろいろありましたが、何とか石膏型が完成しました。よく乾燥させて、続いてFRPでの型抜き作業に入ります。
 石膏にFRPを直接塗ってしまうと、FRPをはがすことができなくなってしまうので、離型剤としてワックスを塗ります。この市販のワックスを離型剤として使用する方法は何年か前NIFTY-Serveの自主制作映画フォーラムの小道具・模型作成会議室で教えていただいたものです。模型店などで売っている高い離型剤よりも重宝します。  
 

     石膏型に離型剤のワックスを塗った状態です。
 黒っぽく見えている部分は、型が壊れたところで、そこにできた穴を粘土でふさいでいます。  
 

     次に、石膏型にFRPを塗っていきます。私の場合、最初はFRPにタルクという粉末を混ぜて少し粘度を高くしたものを塗布しています。ある程度乾いたら、その上から再び重ね塗りします。この工程を4〜5回ほど繰り返します。(FRPやラテックスを使うときの悩みが刷毛を再利用できないということです。FRPはアセトンを使えば器具を洗うことができるようですが、アセトンはかなりの刺激臭がある上に、劇物なのでその後処理にも困ってしまいます。私は、刷毛は消耗品と割り切って、1本70円ほどの刷毛を数本使い捨てています。きいた話しでは、ホームセンターなどで販売されているアセトンは、かなり純度が低く、試薬として販売されているものほど扱いにくくないということなのですが…)
 
 

     続いて、グラスシートで裏打ちしていきます。グラスシートには繊維の方向性がはっきりしているものと、ばらばらになっているものの2種類があるようなのですが、私は後者を使っています。繊維がばらばらのものは、細かな凹部にもフィットさせることができます。グラスシートを適当な大きさに切って、それを敷いた状態で上からFRP樹脂をしみこませていきます。凹部などは、刷毛をたたくようにして型になじませていきます。このときだけは、使い捨ての手袋をして作業をするようにしています。なお、FRP樹脂の臭いはシャレにならないぐらい強いものです。室内ではちょっと作業できないでしょう。 型が割れてしまった上部パーツは、この段階で一体にしてしまいました。    

     前部パーツの裏打ちを終えた状態です。    

     この段階で前部と上部のパーツを接合してしまいました。接合にもFRPとグラスシートを使います。    

     型を抜いた状態です。なお、目の部分は電動のディスクグラインダーで削り落として穴をあけました。    

     この段階でトラブルが発生しました。粘土原型の項でも述べましたが、抜きあがったマスクがかぶれないほど小さいということが判ったのです。粘土原型段階では、人の頭にちょうど収まるような大きさだと思っていました。ラテックスなど、柔軟性のある材料で型抜きしたならば、なんとかかぶることができたかもしれません。しかし、FRPの場合はラテックスと違って硬いですから、わずかでも突起があったりするとそれがじゃまになってかぶれないのです。いろいろと検討した結果、前後を40mmほど延長することにしました。全体のバランスはちょっと前後が長くなってしまいましたが、楽にかぶれるということを考えると、この程度の余裕があった方がよさそうです。ただ、こうなるとどうしても頭が大きくなってしまって、身体を含めた全体のバランスが悪くなってしまうかもしれません。このあたりは検討の余地がありそうです。    

     延長もFRPを使います。布テープなどで仮止めした状態にして、グラスシートで裏打ちしていきました。    

     角を付けた状態です。角の作業も疲れました。二つに分割された角のパーツを、まずバリ取りをして、FRPで接着します。一つ二つならともかく、これが6個もあると、えーかげんイヤになってしまいます。    

     というわけで、とりあえずは全体像が見えてきました。    

     あとは、気泡や接合部のギャップを埋めたりする作業を行います。できれば電動工具を使った方が能率が上がりますね。 さて、この後、塗装作業や後頭部の処理などが残されているわけですが、それはまた別項にて。    



 皆様からのご意見、ご批判、ご質問などお待ちいたしております。メールはこちらまで。

 
戻る