ラテックス製怪人マスク作例

 今回掲載するのは、もう15年以上も前に自主制作映画用に作成したラテックス製の怪人マスクです。
 結局、この作品は私の怠慢でクランクインにまで至らなかったのですが、このとき作ったマスクだけはずっと押入の奥にしまい込んでいました。
 このマスク、原型は現在製作中の怪獣モデルの粘土造型もお願いした知人のTH氏の手によるものです。
 このまま朽ちさせてしまうのは、あまりにも勿体ないし、せっかく製作してくれたTH氏にも申し訳ないので、この場で記録を留めておこうと考えた次第です。

カニ人間 その1




 これは、ショッカーの怪人「カニ人間」としてデザインを依頼したものです。
 ラテックスのマスクの作成法は、FRPマスクの作成法とまったく同じです。
 すなわち、まず油粘土で原型を作り、その石膏型を作成します。FRPの場合は、石膏型にFRPを注型して…となるわけですが、ラテックスマスクの場合は、怪獣モデルの場合と同様に、石膏型にラテックスを塗っていくわけです。FRPの場合にはグラスシートを補強材に用いますが、ラテックスマスクの場合は、ガーゼを3〜4層にわたって塗り込めました。
 FRPの作り物は、多くの場合型抜きした後表面処理をひたすらやらなければならないのですが、ラテックスの場合は表面処理といってもできることは限られていますし、なにより怪獣・怪人の場合は表面の平滑度なんてのはあんまり気になりませんから、至って気楽です。
 ラテックスが乾いたら、バリバリと型から剥がし、あとはゴム系のボンド(G17とかGクリヤーとか)で接着してやればできあがりです。




 マスクの内側には、型くずれしないように針金を貼ったりもしています。また、ポリウレタン樹脂を貼り込んで着用者の顔との密着性を高めています。
 塗装は、模型用のラッカー系塗料(グンゼのMr.カラー)を使用しました。製作から15年以上経過した現在も塗装の剥がれなどはほとんどありません。(まあ、あんまりハードに使用していなかったからだと思いますが)
 眼の部分はFRPです。FRPとラテックスの部分の接着にもゴム系のボンドを使っていますが、これはさすがにちょっとしたことで剥がれたりしました。


カニ人間 その2




 これは、上のカニ人間の準備段階として試作したものです。製作方法は上記で示したものと全く同じです。
 「カニ人間 その1」は、複雑な形状をしていたので、石膏型の分割数もずいぶん多かったのですが、この「その2」の方は前後の2分割のみとなっています。ラテックスの場合FRPと違って、少々細かい部分やちょっとした逆テーパなどでも無理矢理石膏型から抜くことができます。


ライダーっぽいマスク




 こちらは、カニ人間と戦うヒーローのマスクで、仮面ライダーをモチーフにしたものです。当時はライダーブラックとかRXとかが放送されていた時期だったのですが、あえて旧1号ライダーをやりたいとTH氏に造型とデザインを依頼したのでした。
 このライダーマスク、全体のプロポーションを考慮して頭部をできるだけ小さくするために、大人の頭ギリギリの大きさで作られています。このため、FRPで作ってしまうとうまくかぶれなかったり、窮屈すぎてアクションができないのではないかと危惧しました。そこで、まずラテックスでアクション用のマスクを作ったわけです。ラテックスの場合、少々窮屈でもなんとか頭にかぶることができます。しかし、どうしてもエッジの処理とか表面処理とかは品質が落ちてしまいます。まあ、撮影で使うのならば引きのアクションをラテックスマスクで、アップをFRPマスクで…などと考えていたのですが、結局ラテックスマスクを作った時点で力つきてしまいました。


 ラテックスの怪人・怪獣のマスクは(デザインにもよりますが…)FRPに比べると、ずいぶん手軽に簡単にできるという印象があります。たとえば、最後にご紹介したライダーっぽいヒーローマスクもFRPならば表面処理などでずいぶん時間がかかるところなのですが、ラテックスならば塗装するだけでほぼ完成です。もちろん、その代わりシャープなエッジや面は望めないのですが…
 私も機会があったら、15年振りにラテックスの怪人マスクでも作ってみようかと思ったりしているところです。


 なお、今度アトラクションサークル・HiJACさんでは、2002年度日本SF大会「ゆ〜こん」で自主制作映画を撮影することを考えておられるとのことなのですが、もしかしたらずっと日の目をみることのなかったこれらのマスクをその映画のなかで使っていただけるかもしれません。やっぱりプロップとして作ったからには何らかの形で作品に残したいわけで、もし今回の話しが実現できればようやくこれらのマスクを作った目的が達せられることになるかもしれません。


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