ZC−1000を使ってみよう

 今でこそビデオカメラが普及して、しかもパソコン上で編集からエフェクトまで自由自在という感じなのではありますが、ほんの20年くらい前までは自主制作映画といえば8ミリカメラでした。
 私自身は当時実際に自主制作映画を作ったということはなかったのですが、それでもやはり暗い室内で上映されるフィルムの光には何度も心を躍らせたものです。
 フィルム独特の味わいのある光は私の心を虜にしてやみません。いつか自分もフィルムの作品を作ってみたいと思い続けてきました。

 余談ながら、その念願の一部がかなったのは6年ほど前のことです。私の所属しているグループで5分ほどの8ミリフィルム作品を撮影することになりました。ところが、たった5分の作品とはいえ8ミリフィルムで映画を撮るというのは思った以上に大変な仕事でした。
 何しろ、ビデオと違ってフィルムは撮影から現像まで1週間以上かかります。現像から上がってきたフィルムがうまく写っていなかったりしたらもう泣くに泣けません。もう一度役者やスタッフを集めて再撮影したり、最悪の場合そのシーンを丸ごとカットとか、全然ダメダメな仕上がりのフィルムでも無理して使ったりなど笑えない苦労の連続です。
 また、編集作業も想像を絶するもので、フィルムを切ってはつなぎ、切ってはつなぎの繰返し。私は編集作業をしている知人の横で作業を見守っていたのですが、何も手伝うこともできずただじっと見ているだけで、途中で見ている私の方が疲れてしまいました。後で聞いたところでは、5分の作品の編集に二晩徹夜したとか…
 このときばかりは、やはりビデオの方が手軽で便利だと再認識しました。結局、私が8ミリフィルム作品に携わったのはそのときだけで、その後はデジタルビデオで撮影してパソコンでエフェクトをかけたり編集したりという手法をとるようになって現在に至っています。

 それでも、やっぱり苦労の末に創り上げた作品が、暗い室内でカラカラ回る映写機の音とともにスクリーン上に淡く映し出されるのを見ると、「ああ、フィルムはいいなあ」とか思ってしまうのであります。

 余談が長くなってしまいました。さて、8ミリフィルムの世界を少しでもご存じの方なら、ZC−1000という名前には特別な感慨をお持ちではないでしょうか。国産の8ミリカメラの最高峰といえる機種でありまして、レンズは交換式。特撮好きには嬉しいことに、コマ単位での巻き戻しや逆転撮影、それに36コマ/秒、72コマ/秒のハイスピード撮影まで可能という、まさに至れりつくせりのカメラです。
 かのDAICON版帰ってきたウルトラマンではこのカメラが3台も動員されたとのことで、2001年日本SF大会の衣裳展示では帰ってきたウルトラマンのプロップの傍らにZC−1000も展示してありました。
 ところが、さすがにこれだけの機種ともなりますとお値段も最高峰でありまして、発売当時で20万円以上したらしいです。もちろん生産中止になってからは中古相場も高く、現在では程度の良い物なら20万円はくだらないと聞き及んでいます。
 (追記 このページをお読みいただいた方からご指摘を受けました。私はあるWebサイトにある当時のパンフレットの資料にあった「ボディ価格144200円、レンズ価格69300円」という記述を読んで、レンズとは別売りの広角レンズのことだろうと早合点してしまいまして…『発売当時は15万円…』と書いてしまっておりました。ところが、これは勘違いでありましてZC−1000は一眼レフカメラのようにレンズが交換式のため、価格もボディとレンズに分けて記載されているのだそうです。そういえば、昔の一眼レフカメラはそんな記載方法が多かったなあと思い出しました。仏陀電影のFさま、貴重なご指摘ありがとうございました。)

 私もかつて何度かZC−1000が欲しいと思ったことがあったのですが、金銭的に折り合わなかったり、品物がなかったりして入手するには至っていませんでした。
 ところが、先日ひょんなことからこのZC−1000を手にすることになりました。近所のHARD OFFにジャンク品扱いで販売されていたのです。ジャンク品ということでちょっと悩んだのですが、値札に書いてあった「チェック時動作」という言葉に賭けてみることにしました。まあ、動かなければ動かないで記念品になるかなあという思いもありました。
 しかし、帰ってよく見てみると、前の持ち主はさすがにこれだけのカメラを今まで保存していらしただけあって、ずいぶん手入れが行き届いていました。古いカメラにありがちなレンズのカビとかも全くなく、目立った損傷も見あたらず、驚くほど程度の良い品物でありました。よほど大切にされていたのだなあと感じ入ると同時に、縁あってそんなカメラを引き取ったからには、大切に「使って」やらなければと身の引き締まる思いがしました。

 さて、どうやら電池を入れればシャッターやフィルム送り軸などの最低限の動作はできそうだということがわかって、早速テスト撮影をしようと思い立ちました。というわけで、近所のカメラ量販店に行って8ミリフィルムを探してみたのですが、残念ながら在庫はありませんでした。(店員さんに「シングル8のフィルムはどこにありますか?」と訪ねたら、8ミリビデオテープのコーナーに案内されてしまいました) このお店、6年前に8ミリ作品を撮影していた頃には店頭に8ミリフィルムを並べていたのですが…さすがに時代の流れというやつでしょう。
 もちろん、8ミリフィルムはまだ生産しています。ただ、やっぱり店頭在庫があるところというのは鳥取のような田舎ではもうほとんどないようです。注文すれば取り寄せては貰えるのですが、私としては一日も早く撮影してみたいと思っていましたので、通信販売を利用することにしました。8ミリカメラを中心としたショップレトロ通販さんではフィルムやアクセサリそしてカメラ本体に至るまで様々なものを販売していらっしゃいます。(以前、Nifty Serveの自主制作映画関係のフォーラムでは、このレトロ通販の方がカメラ機材などに関するお話しをずいぶん描き込んでいらっしゃいました) 注文した翌日には宅配便でフィルムが届きました。

 購入したフィルムは2種類。屋外撮影用のR25N、屋内撮影用のRT200Nです。価格はそれぞれ1170円と1440円でした。フィルムの長さは50フィート(15.25メートル)。通常の撮影では約3分の長さとなります。

 フィルムはカートリッジ状になっており、上の写真のようにカメラ本体にロードします。

 さて、問題は何を撮影するかなのですが…やっぱりZC−1000といったら特撮ですよ、特撮。というわけで、まずは何といっても72コマ/秒、すなわち通常の4倍速のハイスピード撮影を試みてみました。
 シャッターボタンを押すと、通常のフィルム送り音とは異なったかん高い「ギュイーン」という音が鳴り響きます。特撮映画のメイキングなどでよく耳にするカメラのハイスピードの回転音そのままです。もう、この音を聞いただけで気分は円谷英二監督であります。「カットがかかったらフィルムを無駄にするな!」とか言ったりして。いや、自分で自分に言うんですが…

 特にセットとかもなかったので、とりあえずラテックスで作った怪獣マペットをいろいろな所に持っていって撮影してみました。特撮といえば水だろうということで水槽に入れて圧縮空気で水柱をあげてみたり、特撮といえば爆発だろうということで砂浜に持っていって爆竹を破裂させてみたりとか…ありがちですなあ…

 また、特撮といえばミニチュアだろうと、米子れいるろおど館にお願いして鉄道模型のレイアウトを撮影させていただいたりもしました。
 余談ながら、れいるろおど館の館長ホマレ氏も自主制作映画の監督のご経験があって、ZC−1000を手にされるとやおらコマ撮りを始めていらっしゃいました。(やっぱり、8ミリといったらコマ撮りですよねえ)

 というわけで、いろいろやってみて2本のフィルムを使い切りました。
 現像は(8ミリフィルムの代わりに8ミリビデオテープの場所を教えてくれた)カメラ店に持っていきました。約2週間で仕上がるとのことです。
 確か、国内ではもう8ミリフィルムを現像してくれるラボは1カ所しか残っていないというのを聞いた記憶があります。(現像所に関するエピソードは、前述のレトロ通販さんのページに取材記事があります。私が聞いた「1カ所のラボ」というのは大阪のことだと思ったのですが、この記事を読むと平成10年に大阪現像所は8ミリ業務を閉鎖し、東京に統合されたようです)


 ビデオといえば、この日はついでにデジタルビデオカメラを使って同様のカットを撮影しました。ビデオカメラで撮影した素材は、その日のうちにパソコンに取り込んでスロー再生処理をかけたり、色調調整処理をしたりして遊びました。これはこれでやっぱり便利ではあります。
 まあ、ビデオを使った特撮や編集はまたいつか別項でまとめたいと思います。(その前に作品を完成させなければなりませんなあ)



 さて、フィルムの現像が仕上がってくるまでの間というのはひたすら待つしかありません。ビデオにしろデジタルスチルカメラにしろ、撮ったその場で結果が確認できるものが多くなっている昨今ですが、こうやって待つというのもそれはそれでなかなか楽しみなものです。こういったところもビデオにない魅力なのかもしれません。


 ……2週間後に受け取ったフィルムが真っ白とか真っ黒なんてことがなければよいのですが……

以下工事中……現像が上がってきたら追加します……



 なお、私自身は8ミリカメラおよびフィルム撮影に関しては本当にズブの素人でありまして、カメラの機種や撮影テクニック等に関する情報などを書くことはできません。
 ただ、当然のことながら8ミリに関しては今なお多くの方が真剣に取り組んでいらっしゃいますし、その中にはWeb上で様々な情報を発信してくださっている方もいらっしゃいます。
 商業サイトとしては前述のレトロ通販さんのページが非常に情報豊富で参考になります。
 また、適当なキーワードで検索すれば、多くの情熱的なサイトを発見できます。

 是非、魅力的な8ミリフィルムの世界を発見していただければと思います。


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