ビリケン商会のレッドキングを作る

 久しぶりの休日の昼下がり、部屋の窓なんか開けて春の心地よい風を感じながらボーッと過ごしておりましたら、突然模型の神様がご降臨なさいました。
 まぁ、早い話模型作りがしたくなったってことですね。
 特にここのところ、成田亨氏の業績をまとめたページを作るために、成田デザインの怪獣をいろいろ見てきましたので、ここはひとつ成田・高山コンビの怪獣を作ってみたいと思い立ったわけであります。
 こんなこともあろうかと、ガレージの2階にはいくつかキットが待機しておりまして、(…というか、買ったまま作らないでツンドク状態になっているだけなのですが)成田・高山怪獣ではビリケン商会のペギラとレッドキングの二つの買い置きがありました。さてどちらをつくろうかとひとしきり思案したのですが、成田氏が「構造的な怪獣」とおっしゃるレッドキングに決めました。


成田亨、特撮と怪獣、フィルムアート社、1996年 より引用

 僕の怪獣デザインでは、やはり構造ということがポイントになります。
 (中略)
 構造的な怪獣というと、やっぱり「レッドキング」とか「ゴモラ」です。
 「レッドキング」って、生々しいと言うより、非常に構築的でしょう。
 要するに、身長が四〇メートルもあるものだから、それを下からこう見たとき、上へ行くほど頭が小さくなるんざなかろうかな、という計算で、ああいうプロポーションにデザインをしました。(中略)
 そして身体に階段のようなものを多数つけて、この効果をさらに生かそうとしました。  (中略)
 人間の眼の高さから見た場合の怪獣ということを基本にして考えた例は、この(レッドキングとゴモラの)二つです。そして実際、撮影すると、そのことが効果的だったとは思いませんが、デザインの基本としては大事だったと思います

 上で掲げているのはパッケージとインスト。あいかわらずビリケン商会のパッケージはいささかそっけないです。原型は酒井けいぞう氏。価格は3000円とお手頃です。

 例によって、パーツ構成はこんな感じです。ゴジラのような怪獣であれば下あごが別パーツになっており、まず口の中の塗装処理などをやらなければならないのですが、レッドキングの場合は頭部が小さいため、一体成形になっています。ゴジラのように背ビレなどのパーツもありませんから、いたってシンプルなパーツ構成になっています。
 「ビリケン商会のキンゴジを作る」のページでも説明したように、まずはパーツをお湯に入れて中性洗剤で洗います。その後、余分なバリの部分を温めながらアートナイフ等で切り取ります。冬場はファンヒーターの吹き出し口あたりにパーツを置いておけばすぐ柔らかくなりますので、ドライヤーとかを使わなくてもすみます。
 あとは各パーツを組んで、接着します。(ビリケン商会のソフビは可動部を残して遊ぶこともできますが、私はどちらかといえば接着派です)

 というわけで、ほんの30分ほどでここまでできました。こんな風に早い段階で全体像がわかるのは楽しいですな。劇中のイメージをよく再現した出色のキットだと思います。
 なお、高さは約25cm程度。尻尾の先まで入れて35〜40cm程度でしょうか。

 さて、これから接合部の隙間をエポキシパテで埋めた後、塗装に入っていくわけです。
 ところが、このレッドキングという怪獣、凹部に空色のシャドウが入っていたりして、塗装に一工夫が必要になりそうです。まぁ、とりあえず今日のところは、ホッピーのジョッキを片手にこのレッドキングを眺め回しながら、どうやって塗装するか考えようと思います。
 塗装法に関しては、インストに次のような記述があります。

 カーショップでさがしてきたゴールドのスプレーを全体に吹き付けます。スプレーを30センチ以上はなし、出来るだけ表面がザラつくよう仕上げます。ジャバラ状の体表の谷部に青(X-14)をドライブラシします。山部など残りに部分には下地のゴールドが死なない程度に黄(XF-60+XF-3)をドライブラシします。油彩用の硬い平筆を使用しました。

 ゴールドを下地にするというのは、ちょっと思いつきませんでした。なるほど…
 このインストに書いてある方法も面白そうなんですが、どうも仕上がりがイメージできないので、私の場合はとりあえずいつもの私流に、
 基本色のダークカーキ→青の谷→山部ののカーキ→全体に薄くゴールドを吹く
 といった感じでやってみようと思ったりしています。うーむ、ゴールドの効果が果たしてどう出るか…
 ちなみに、レッドキングの独特の光沢については、造型を担当された高山良策氏のご夫人の高山利子氏が次のように語っていらっしゃいます。

特撮映画研究会 編、怪獣とヒーローを創った男たち、2002年12月刊 より引用

 昔は光沢のある塗料なんて便利なものがございませんでしたから、太刀魚っていうお魚から取っていたんですよね。太刀魚の粉を油性で溶いたものが缶に入ってね。とっても高価なものですけれど、レッドキングなんかはそれを塗って「これは何の光りですか?」って聞かれたりしましたね。



 というわけで、春分の日の休日を利用して塗装作業をすることにしました。


 写真を小さくしてしまったので、わかりにくいかもしれませんが、塗装の過程は上の写真の通りです。
 まず、ダークイエローを少し暗くした色を全体に吹きました。次に、細吹きのエアブラシを使って、青のシャドウを谷の部分に吹いていきます。更に、明るめのダークイエローで山の部分を中心にドライブラシ。最後にダークイエローを全体にうっすらと吹いて色調を整えてみました。


 完成品をみると、谷の青がちょっとつぶれてしまって、全体的に黄色みががってしまったような気がします。
 もう一度、この上から青のシャドウを吹き直そうかとも思ったのですが、私としてはあまり谷部の青を強調するのも好きではなかったので、結局そのままにしました。


 ただ、劇中のイメージとはちょっと異なったものになってしまったかもしれません。まぁ、趣味の世界ですからそれもまたよしってことで…
 ちなみに、塗装に着手してから完成まで約3時間といったところでした。


 今日は天気がよかったので、外に持って出て写真をとってみました。写真では全体の色調をすこしグレーっぽくしていますので、実際の完成品とは雰囲気が違ってます。



 プリンタの前でビリケン商会のキンゴジと仲良く並べてみました。


 次はペギラあたりをつくろうかなと思ったりしてます。




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