第40回日本SF大会衣裳展示企画レポート 


 第40回SF大会 SF2001 の企画のひとつに自主制作映画の衣裳展示がありました。私の知人のHi★JACの方々も、せっかくの機会だからと米子のお祭りヒーロー「ガイナマン」を展示することになりました。ところで、今回のSF大会鳥取県からの参加者数は5名でした。そのうち私とHi★JAC関係者の2人で計3名。残りの2名はどういった方だったのでしょうか、よかったらご連絡ください。

 フタを開けてみれば、今回のSF大会の企画母体であるGAINAXの前身DAICON FILMに関連したプロップや衣裳の展示がほとんどで、それ以外の衣裳は、ガイナマンを含めて4点ぐらいしかありませんでした。しかし、DAICON FILMのプロップや衣裳はやはり興味深いものでしたし、それ以外の自主制作映画の衣裳もFRPマスクやラテックスマスクも素晴らしい出来でした。せっかくの機会ですから、展示内容を記録しておこうと思います。容量の関係で写真を縮小してしまっていますが、その一端は感じていただけるのではないかと思います。容量が少々大きくてもいいから、もっと大きな写真を見たいとおっしゃる方がありましたら、私の方へメールをいただければと存じます。

 なお、今回の衣裳展示にあたっては、多くのSF大会スタッフの方々にお世話になりました。おかげさまで搬入・展示・搬出を支障なく行うことができました。この場を借りてお礼申し上げます。




DAICON FILM関係

 それにしても、よく残っていたものだなぁと思います。私ぐらいの世代でSFとか特撮を愛好していた方々は、「DAICON III & DAICON IV OPアニメーション」、「愛國戦隊大日本」、「帰ってきたウルトラマン」などに何らかの愛着を感じていらっしゃる方も多いのではないかと思います。あれから、20年近くの歳月が経過して、改めてDVD化された「八又大蛇之逆襲」や「帰ってきたウルトラマン」を観ると、今でもその【映像】クォリティの高さに感心することしきりです。
 なお、本文中斜体字は、展示品に添付されていた説明文です。


  「帰ってきたウルトラマン」より

 




MATアロー1号
「帰ってきたウルトラマン」
 MATの主力となる多目的戦闘機。コンテナユニットの換装によりあらゆるミッションに対応可能。撮影目的に応じて多数のミニチュアが製作されました。 1/48スケール 素材:紙


FUJICA ZC 1000
 当時「究極」とうたわれた8ミリカメラ。ビデオじゃありません。8ミリフィルム用カメラです。コマ撮りによるアニメーション、3倍速の高速度撮影、10倍ズーム、多重露光、逆転撮影、レンズの換装と「なんでも」できる名機。DAICONFILM作品のほとんどが、このカメラにより撮影されました


 まずは、名作「DAICON版 帰ってきたウルトラマン」より主役メカMATアロー1号です。実際の画面上での精緻なミニチュアワークが印象に残る作品でしたが、そのミニチュアのほとんどが紙でできていると聞いて驚愕した記憶があります。展示されているミニチュアの全長は250mm程度だったでしょうか。以前ゼネラルプロダクツから発売されていたバキュームフォームキットよりも一回り大きいという印象でした。核爆弾を積んだコンテナはそれより更に大きなスケールのモデルです。庵野ウルトラマンがアロー1号をつかまえてコンテナを引き抜くシーンで使われていたモデルだと思われます。ということは、このコンテナに合わせたスケールのアロー1号本体も製作されたということですね。
 ここで展示されているモデルのエア・イン・テーク部は単5電池の電池ボックスがそのまま使われていました。翼端灯を点灯させるための電源として使用したのか、それとも単なるディテールアップパーツなのかはわかりませんでした。
 余談ながら、同じ場所に展示されているZC 1000は、自主制作者にとっては垂涎のカメラです。私も何度か購入したいと思ったことがありましたが、最近では数十万円ぐらいが相場だとか。近年はビデオ編集環境が整ってきて、8ミリカメラそのものはもちろん、撮影や編集のコストを考えるとなかなか8ミリフィルムを使った映画制作は躊躇してしまう部分があります。(以前、私の所属しているグループで8ミリ映画を撮影したときには、その編集作業を傍らで見ているだけで疲れました) それでもやはり「フィルムの魅力」は私のような半端な自主制作者にとっても未だに抗しがたいものがあります。

   

 
瓦の波
「帰ってきたウルトラマン」
この作品の住宅街のミニチュアセットは、このパーツがあったればこそ!木板に彫ったパターン原型をプラキャストで複製連結して拡大、それをバキュームフォームで量産複製しました。これにより、日本の典型的民家のミニチュアを大量生産することが可能になりました。アップに耐える大量の瓦屋根は、DAICONFILMとゼネプロのノウハウが結集した画期的なモノだったのです!
 
 瓦のモールドのバキュームフォームによる複製です。映像用のミニチュアというのは面白いもので、少々粗っぽく作ってあったりしても、キチンとツボさえ押さえていれば画面上ではものすごくよく見えたり、逆にちょっとしたディテールを省略してしまったがためにオモチャっぽく見えたりするものです。こういった瓦などは、やはりアクセントとしては重要な要素でしょう。これが更に発展すると、「ラドン」の瓦屋根のように瓦一枚一枚に演技をさせるようになってしまうのかも。
   

 

キャラクター名:MAT隊員
原材料:化繊等布地
出演作品:DAICON・FILM版『帰ってきたウルトラマン』
製作年度:1982年
コメント:地気宇防衛組織(TDO)の機関、MAT(Monster Attack Team)の隊員服



 私ぐらいの年代で、自主制作映画属性のある方は、このDAICON版「帰ってきたウルトラマン」に刺激を受けた人も少なくないのではないかと思います。私自身、この作品は未だにアマチュア8ミリフィルムのひとつの到達点であると思っています。

 なお、この作品2001年の8月にDVDがリリースされ、SF大会でも販売されました。(当然、速攻購入しました) タイトルがタイトルだけに通常は通信販売のみの取り扱いだそうですが、GAINAXで購入可能です

 ある方からご指摘いただくまでは知らなかったのですが、このDVDにオマケでついてくるメイキングや資料を収録したCD-ROMが実に素晴らしいものでした。メイキングはもちろん、ミニチュアの解説、絵コンテ、以前発売された解説本の再録、スタッフインタビューなど、本作に関わるあらゆる情報が網羅されています。

 私としてはミニチュアワークスと、(私の地元鳥取県米子市で撮影された市街地の戦いをはじめとする各シーンの)撮影スナップなどが実に心揺さぶられるものでありました。自主制作特撮映画撮影現場の熱い雰囲気がひしひしと伝わってきます。こういった写真を見ると、自分も特撮しなきゃという意欲がふつふつと湧いてきてしまいます。

 というわけで、未見のお若い方はもちろん、はるか昔にダビングを重ねた荒い映像を興奮しながら見たご同輩の方も是非もう一度ご覧になってください。はっきり言って、付属のCD-ROMだけでも\6,800の価値アリです。


  「愛國戦隊大日本」より

 かの問題作愛國戦隊大日本のマスクや衣裳です。私ぐらいの世代の人ならば、サンバルカンの歌をあの歌詞で歌えてしまう人もけっこういるのではないでしょうか。SF大会では深夜に大日本の上映会もあったようですが、(その場では「フランス5」なる作品も上映されたようです) 私はそのころホテルで寝てました。


 



「アイ・カミカゼ」
ヘルメット/衣装
「愛国戦隊大日本」
北方の魔の手から祖国日本を守護する5人の勇者。
これはその強化スーツ。
通気性は劣悪で、真夏の炎天下での撮影は地獄でした。スーツは市販のジャージを改造。ヘルメットはプラ板のバキュームフォームで作成


 大日本のマスクです。アイ・カミカゼには零戦、アイ・ハラキリには切腹用の脇差しと桜の花といった意匠が額の部分に描かれていたのを初めて知りました。


 


ミンスク仮面
「愛国戦隊大日本」
悪の組織レッドベアーが送り込んだ怪人。
進退極まる(ママ)と巨大化して「特大ミンスク」となる。
額(甲板)に搭載したMig-25はベレンコ中尉の亡命でも有名な機体ですね。って関係ないか。
頭部:紙製


 いや〜、ミンスク仮面は本当にボール紙製でした。これもよく残っていたものですねえ。説明にもあるように、額の部分にMig-25の1/72と思われるプラモデルが貼り付けてありました。本編をみたときには全然気付かなかった…

 
   

 


ジャボチンスキー将軍衣装
「愛国戦隊大日本」
レッドベアーの最高幹部にして怪力無双の豪腕武人。緑の肌色が不気味でしたが、これは人体を直接ラッカースプレーで塗装したもの。良い子はマネをしないでください。ヘルメットは工作容姿をベースに、レジンキャストでデコレーションしています。

 …というわけで、素肌に直接ラッカースプレーはマネをしてはいけません。

 
   

 

キャラクター名:アイゲイシャ
原材料:ビニール地、ボール紙、綿地等
出演作品:DAICON FILM『愛国戦隊大日本』
制作年度:1982年
コメント:愛国戦隊大日本の紅一点


 振り袖の部分には花札の図案が、ごくごくてきとーに描かれていました。

   

 

大日本戦艦
「愛国(ママ)戦隊大日本」
内部に大日本ロボを格納する大日本の移動要塞。3人が3体の合体メカに登場し、2人が戦艦に残るというスタイルは、制作当時放映されていた「ゴーグルファイブ」と同じパターンですね。展示品とは別に、60センチサイズのアップ用ミニチュアも制作されました。
ノンスケール?、素材:紙

   

 

毘沙門天号 「愛国戦隊大日本」
大日本戦艦より発進した三体のメカ、帝釈天号、毘沙門天号、統率天号は合体し大日本ロボとなる。展示品の毘沙門天号は胴体および腕部となります。ボール紙の素朴な工作。ちゃんと「変形」するんですよ。これでも。
ノンスケール、素材:紙


 大日本戦艦・毘沙門天号のいずれも、愛國戦隊大日本から、大日本の面々が登場するメカです。大日本戦艦は全長30cm程度、毘沙門天号は全幅20 cm程度だったでしょうか。どちらも意外に小さいという印象でした。とはいえ、これが画面上に映るとそれなりに見えてしまうのが素晴らしいところです。

 
   

  「八岐之大蛇の逆襲」より

 
ヤマタノオロチ(頭部)
「八岐大蛇の逆襲」
着ぐるみは全長4メートル。8本首の演技には最低5人の人員が必要でした。展示品はその頭部。
1/24スケール、素材:ハードスポンジ

 八岐之大蛇の逆襲は、私の故郷鳥取県米子市に怪獣が出現するというもので、そのストーリーはともかく精緻なミニチュアワークと迫力ある特撮で一部の地元民を魅了したものです。今回、初めてオロチの頭部を見ましたが、意外に小さいという印象でした。写真に写っている部分で全長40cm程度だったでしょうか。素材にはハードスポンジとあります。確かに、ラテックスよりは表面が硬い感じの印象を受けました。
   

 



宇宙人
「八岐大蛇の逆襲」
オロチで地球侵略を企む宇宙人。千年単位で気が長い。
下から腕を入れて操作するマペットタイプ。
同一の原型から複数を製作し、小道具や色で特徴がつけられています。
1/1スケール、素材:ラテックス、布

 眼の部分がドールアイなのか、塗装表現によるものなのかは判然としませんでした。多分、ドールアイだとは思いますが…触って質感とかを確かめてみたかったです。
 
【追記】
 このページをご覧いただいたK。Yさまよりメールで情報をお寄せいただきました。
 
 宇宙人の眼は、ガシャポンの容器を裏側から塗装したものだそうであります。
 また、オロチの眼もガシャポンの容器を使っているそうです。
 (そういわれて、改めて写真を見直しますと、宇宙人の方は200円ガシャポン容器っぽい感じです〜それにしても塗装がうまい! 見習いたいものです〜。 また、オロチの方はもう少し小さい卵形のガシャポン容器のような感じがします。真ん中に穴があいているのもそのままですね)
 
 K。Yさま、貴重な情報をお寄せいただき、ありがとうございました。
2001.11.7
   

その他の作品

   おなじみ「のーてんき」です。マネキンに着せてある状態では、意外に細身…でした。    

 

アニメビデオ作品「フリクリ」より“カンチ”
ガイナックスのビデオアニメ(OVA)に登場するメイドロボット、時々戦闘もする。
(デザイン:貞本義行)
FRP製 等身大


 アニメのプロモーション用のキャラクターでしょうか。全身FRPのディスプレイモデルでした。

   

 
ポチ
「早撃ちケンの大冒険」
DAICONFILMのウエスタン人形劇に登場。
大悪党ゴンザレスの飼っているペット怪獣。
画面に写る(ママ)上半身のみの着ぐるみが制作されています。スポンジとラテックスの柔らかい表面をポリパテでコーティングする事で怪獣らしい皮膚を表現しています。

 数あるDAICONFILMの中で、この「早撃ちケンの大冒険」は未見です。全編マペット劇という魅力的な映画らしいのですが…その後、第2作目まで作られたと聞き及びます。
   



 DAICON FILM以外の衣裳展示

 


キャラクター名:仮面ザイバー
原材料:ハードウレタン、FRP等
出演作品:舞映・自主製作8m/m映画『仮面ザイバー』シリーズ
製作年度:1992年
コメント:「俺をライダーと呼ぶな」の名科白で有名な自主製作映画ヒーロー

   

 

キャラクター名:綾乃小路 秀麿(あやのこうじ ひでまろ)
原材料:ラテックス等
出演作品:舞映・自主製作8m/m映画『仮面ザイバー』シリーズ他多数
製作年度:1992年
コメント:仮面ザイバー・シリーズの敵組織ヘルショッカーの怪人

 いずれも、「仮面ザイバー」という作品に登場するキャラクターです。私は寡聞にして本作品を知りませんが、確か、舞映さんといえばかのジェニーVを製作したところであったような…(うろ覚えです)
仮面ザイバーは、FRPのしっかりした造形物でした。複眼部分は、多数の穴を開けることで表現してありました。
   

 

キャラクター名:幻覚宇宙人 メトロン星人
原材料:発泡スチロール等
コメント:背中側の資料がなくて製作に苦労しました


2年前のSF大会でも会場で拝見しました。SF大会の常連さんでしょうか。

   

 

POINTER 7
地球防衛軍 ウルトラ警備隊
日本版
日産グロリア
1987年型P330

   

 

TDF-PO II POINTER
1991年より製作開始、1992年に開催された第31回日本SF大会「HAMACON」でデビュー。
撮影に使用されたポインターを忠実に再現すべく、クライスラー・インペリアル1958年式を改装。主要部材は、0.8ミリ厚の鉄板を使用しています。
 全長588 cm×全幅217cm×全高145 cm
 総重量 2640 kg 総排気量 6420 cc
 乗車定員 6人
 燃費 1リットルあたり2km(市街地走行時)
 東京・名古屋間を高速道路使用で100リットル以上使い切る。
 最高速度 時速80マイル以上。


 今大会ではウルトラ警備隊のポインターが2台展示されていました。うち、一台は日産車を改造したものでした。しかし、何と言っても、もともとのポインターの原型となったクライスラー・インペリアルを改造した車輌の再現度は驚くべきものがありました。それにしても、1リットル2キロとは、ガソリンをばらまいて走っているようなものですねえ。

   

 

MATビハイクル


 展示プレートを記録するのを忘れてしまいました。ご存じ、マツダのロータリーエンジンカー、コスモスポーツです。それにしても、何と美しいフォルムでしょう。赤のストライプも似合っています。後ろのポインターとそろい踏みしているあたりなんか、もうウルトラ者としてはゾクゾクするような光景です。
 余談ながら、私が学生だった頃、近所の中古車やでコスモスポーツが100万円ほどで売りに出ていました。学生の身ではお金もありませんから、いつも前を通るたびに物欲しそうに見ているだけでしたが、いつの間にかなくなってしまいましたが、今なら借金してでも買うんじゃないかと思います。

   

 

キャラクター名:獣王武人 ガイナマン
原材料:ボール紙等
出演作品:鳥取県米子市で毎年8月に行われている市民祭り「米子がいな祭り」でのショーを中心として活躍
製作年度:91年頃(このスーツは98年頃に作られた5代目のものです)
コメント:鳥取県西部を中心として活動する自主制作映画/アトラクションショーサークルHi★JACが生み出したご当地ヒーローに一人です。ディーラーズルームにも出展しておりますので、お立ち寄り下さい

 というわけで、我らがガイナマンであります。どうしても重心が上方に行ってしまうため、マネキンを立たせるのに苦労しました。

   


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